12月1日、シティグループがインドの貧困層向けサービス事業の計画について正式に発表しました。この計画は、インドの読み書きができないスラム居住者を対象に、最新鋭の技術を搭載したキャッシュマシーンを投入するものです。
【世界最大手の貧困層向けサービスの開始】
12月1日、シティグループがインドの貧困層向けサービス事業の計画について正式に発表しました。この計画は、インドの読み書きができないスラム居住者を対象に、最新鋭の技術を搭載したキャッシュマシーンを投入するものです。
生物測定学を活用したこのATMでは、指紋認証の他に、色や音声を使ったナビゲーションシステムを活用します。ターゲットとなる貧困層は5万人銀行口座を持たない層を対象にしています。今後、18ヶ月をかけて25~35台のATMの設置を行います。
シティグループは、既にインドの金融街であるムンバイ(ボンベイ)近くのバンドラのスラム街とハイデラバードに2台の音声ナビゲーションを搭載したATMを設置していますが、新規事業への足がかりとして今回のプロジェクトはパイロット的なものとして位置づけられています。
こうした世界最大手、メガ金融機関による低所得層向けの新規事業は、今回まさに初めての動きですが、今後もブラジル、インドネシアなど、無限に広がる「ネクスト・マーケット」での展開が期待されています。
【NGOのビジネスモデルを活用?】
実は、興味深いことに指紋認証や色・声のナビゲーション機能をつけることで読み書きができない貧困層にもATMを活用できるというモデルを採用したビジネスは、大手企業としてはシティグループが初めてですが、このモデルは既に1999年に、ボリビアのNGOであるプロデム(PRODEM)によって開発されたものと非常に似ています。
シティグループのモデルがプロデムのモデルに酷似していることから、2003年にプロデムの事例調査を行った米国のシンクタンク、ワールド・リソース・インスティチュート(WRI)は、「NGO発のビジネスモデルがメガバンクに採用された」とコメントしています。こういった意味でもシティグループの貧困層向けプロジェクトは、非常に大きな意義を持っているといえます。
【貧困層向け事業、今後の展開】
シティグループの貧困層向けマイクロファイナンス型ATMモデルは、一見貧困緩和にまさに貢献しているように見えますが、今回シティグループが対象とした貧困地域は、世界的な金融街であるムンバイ郊外や大都市に近接している都市に限られています。
WRIは、インドの地方ではATMに必要な電力や通信機能が不十分であるため、このようなATMビジネスが必ずしもインドの大多数の人々が陥っている貧困の緩和に貢献するわけではないと警告しています。
また、シティグループが貧困層向けプロジェクトという前人未到のビジネスに果敢に取り組み、市場動向をいち早くつかむという動きの裏には、ICICI銀行などの競合企業と差別化にも繋がるという市場競争が見え隠れしています。
しかし、こういった貧困層の消費者獲得のための市場競争が、低価格、高品質のサービスを実現することで、地方の貧困層へもサービスを拡大していくことが期待されています。
企業歳入と国のGDPを比較した際、シティグループはイスラエルと同等の経済力を持っており、アイルランド、シンガポール、ニュージーランドよりもそれが大きいというデータがあります※。
また、同データによるとトップ100の18%(18企業)が日本企業です。シティグループといったメガ企業だけでなく、政府機能が弱まる一方で経済的な影響力を持つようになった企業にとって、持続可能(サステナブル)な社会を実現するために果たすべき責任は多くあります。
特に日本企業においては国内市場の飽和、海外売上比率の拡大、少子化などが重なり、グローバル化が勢いを増しています。日本企業は、国内での持続可能性の追求と同時に、海外でも同様以上の範囲において役割を担うことが求められています。
今回のシティグループの動きは、従来の企業の社会的責任(CSR)活動が、積極的な機会として捉え、経済活動に結び付けた点で特徴的であるといえます。今後、日本企業のグローバル規模でのCSR活動を後押しするものとなるかもしれません。
※"Globalinc"., p2, 2003(データは2000年)
●シティグループのプレスリリース
・ Citibank India Unveils Biometric ATM with Multi Language Voice Navigation features for Microfinance Customers
・ Citi plans thumbprint ATMs for India poor
●World Resource Institute
ボリビアNGOのプロデムの貧困層向け事業とシティグループの貧困層向け事業の関連性について指摘しています。
From Prodem to Citibank: Biometric ATMs
●地図で見るインドのシティバンクATM設置都市
Citibank ATM Locator