英国の投資調査会社 EIRISが、インドの鉱山事業における人権侵害の現状を明らかにしました。これにより、投資家の認識を高め、事業会社に対しては投資家との建設的な関係構築を求めています。
EIRISは2005年以来、労働基準、人権、贈賄、対人地雷の製造、環境などの各分野における国際的基準に対する企業の取組みに注目し分析調査を実施している機関です。
EIRISがこの度発表した報告書は、『Improving Vedanta Resources' governance of responsible business practice』と題されたものです。ヴェダンタ・リソーシズは英国に本社を構えるものの、ほとんどの事業をインドで展開しています。同社が計画している鉱山プロジェクトの問題点に注目した同報告書では、現状の課題とともに改善案も提案しています。
これによると、ヴェダンタ・リソーシズは「同社が掲げているボーキサイト鉱山建設計画、およびアルミナ精錬所拡大計画は「国際的な非難を浴びて」いるということです。両計画には、インドの最貧地域のひとつである、オリッサ州のNiyamgiri山の頂上にボーキサイト鉱山を建設する計画が含まれていますが、この山は現地の Dongria Kondh部族の聖地として知られている山でもあります。
この計画について同社は、周辺の地域住民に対し、十分な説明をしてこなかったと指摘されています。
さらに同報告書は、ヴェダンタ・リソーシズが現地住民の権利以外にも、生物多様性、汚染、安全性、賄賂など各分野で浮上する課題の特定などといった、数多くの国際基準を満たしてこなかったことも明らかになりました。
同調査を通じ、ヴェダンタ・リソーシズが国内同業者と比較しても、このような社会・環境面での取組みが大きく遅れていることが明らかになったことから、投資家に対し同調査結果を活用し、同社との対話を進めることも求められています。
ヴェダンタ・リソーシズに対して提案された鉱山開発計画の改善案には以下のような内容が含まれています。
1. ESG関連課題に対する取締役会レベルのコミットメント
2. 役員報酬とESGパフォーマンスとの関連性を明確にする
3. リスクマネジメント・システムの改善
4. 自主規制の整備
同社がすでに策定してあると主張していた、社会・環境面における課題の特定には重大な欠陥がある、とも指摘されています。例えば、同社の人権方針は事業を通じて明らかに直面するであろう地元住民の人権が十分主張されていないなどの点が挙げられます。
今年に入り、保有していたヴェダンタ・リソーシズの株式の売却を決めた投資機関に、オランダの資産運用会社PGGM Investmentsがあります。PGGMが同投資から撤退した背景には、ヴェダンタ・リソーシズが開示する、人権に関する過去の資料が不十分だったことが挙げられます。
このようなPGGMのヴェダンタ・リソーシズ株の売却に限らず、ヴェダンタ・リソーシズの事業に対する非難は欧州、アジアで比較的大きいですが、北米ではあまり知られていないようです。そのため、投資家の意識向上を目的に、(そして、投資家がより効果的に企業と対話ができるためにも)、EIRISは今年9月に「エンゲージメント・サービス」の立ち上げを予定しているということです。
同サービスは主に気候変動と賄賂などの4大テーマを主体とし、これらの事業会社に出資している投資家に対し、十分なエンゲージメント・サービスを提供していない(情報提供をしていない)企業、および高リスク企業の特定などが主になるようです。
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中国、インド、インドネシア、ベトナム向け投資など、新興国への進出が急がれているなか、このような副次的なリスクに関する配慮も、日本のストラテジック・インベスターとなる事業会社、さらにファイナンシャル・インベスターとなる投資家ともに求められているということでしょう。
●その他関連情報
・ 『Improving Vedanta Resources' governance of responsible business practice』(PDF)
・ ヴェダンタ・リソーシズのHP
・ ヴェダンタ・リソーシズ問題に関して、アムネスティ(日本語)が詳しく紹介しています。
[関 智恵]