企業のサステナビリティ活動により多くの従業員の参画を促すため、企業はどのようにボーナスやそれに類じた現金等のインセンティブを用意しているのでしょうか。実は、このような仕組みを活用している企業は意外に多いようです。
【 サステナビリティ・インセンティブの現状 】
実は既にS&P500企業のうち10%相当の企業がサステナビリティ活動をボーナス体系に反映させていることがわかりました。しかし、このようなシステムが機能するためには、人事システムとサステナビリティ指標の補完性が高く適応しやすい十分な報酬体系が整備されていることが前提条件となります。
さらに、インセンティブが企業戦略や企業バリューに十分に沿ったものでない場合、短期的なコスト削減指標がインセンティブの対象となってしまうという結果に陥ってしまいがちです。そうではなく、インセンティブは企業の長期的な成長およびバリューに根ざしたものである必要があります。サステナビリティ活動では一般的に、活動の持続性、コミュニティとの良好な関係、長期的な発展などをゴールに定めてられていることが多いようです。
【 アルコア副社長が語る事例 】
例えば、米アルミ大手のアルコアはサステナビリティ目標達成のためにインセンティブが有効に活用されています。アルコアの副社長兼サステナビリティ責任者のケビン・アントン氏が詳しく説明しています。
アルコアは長い間職場の安全性評価に取り組んできましたが、戦略的サステナビリティとインセンティブを結びつける取り組みは比較的新しいもので、もともとは取締役会が主導して進められたものです。
「当初、取締役会が多様性(ダイバーシティ)に関するインセンティブ計画を思いつき、これがその後、サステナビリティへと進化したのです。初めに私が連想したのは、当社の「エネルギー消費量」を測定することでした。アルミニウムを1メートルトン生産する毎に必要となる熱・電力量(ギガジュール)、およびCO2排出の削減目標の策定です。その後、これらをインセンティブ評価を測定する主要な指標としたのです。」
【 インセンティブ指標の策定と導入 】
その後、全社活動の一環となるような作業工程をエネルギー環境部門が検討し、同活動が始動しました。2010年には初めてインセンティブが導入されることになりました。この際、エネルギー消費量に関連する新たなサステナビリティ目標も発表されました。さらに、取締役対象の長期的な報酬体系に収益への寄与に関する項目が加えられました。
【 シェルはスコアカードに直接導入 】
その他の企業の例では、シェルのように、企業のスコアカードにサステナビリティ要素を組み込み、年度末のボーナスの算出に活用している企業もあります。シェルのサステナビリティ報告書(2010)(
href="http://sustainabilityreport.shell.com/2010/servicepages/downloads/files/all_shell_sr10.pdf
"target="_blank">こちら)によると、同社ではスコアカードの20%をサステナビリティ要素が占めています。特に取締役会のサステナビリティ評価は、50%が安全性、50%がサステナビリティ・インデックス(ダウジョーンズDJSIを採用)での同社の評価が基になっています。
【 HSBCもスコアカードを活用 】
金融大手のHSBCもまた、従業員のサステナビリティ活動の評価にスコアカードを活用し、それを基にインセンティブを支払っています。これにより、11.9%のムダ削減に成功し、資源・エネルギーの利用の面でも大きな改善が見られたということです。
【 革新性(イノベーション)をインセンティブに 】
前出のアルコア副社長のアントン氏によると、アルコアは職場の安全性を重視していましたがこれは至って自然な流れであり、「より重要なのは企業が自制し、改善の機会を自ら発見すること」だといいます。
例えば、「アルコアでは、より効率的に機械を活用するアイデアを生み出しやすいのは、通常メンテナンス部の従業員です。これらの人々のアイデアを全社で展開し、各溶鉱炉の運転方法を変えることでエネルギー使用量の削減に成功しています。」
アントン氏は、「サステナビリティは独自のプロジェクトとして行うものではなく、各従業員が仕事をどのように行うかである」と考えています。「当社は最終的に数百万ドルのコスト削減に寄与したアイデアを誰が出したものか追跡でき、さらにそのアイデアを共有できるシステムを導入しています。仕組みとしては、各部署のトップがどの取り組みを実施するかを財務リターン分析を基に決定し、逆に選考から漏れたが将来活用できる可能性があるアイデアをアーカイブ化(記録・保存)しています。例えば、チームが良いアイデアを提案できれば、各従業員の評価や報酬に直接反映できる仕組みです。」
同仕組みでは各従業員の成長やアルコアへの貢献度を高めること自体が、アルコアの測定可能なサステナビリティ活動や革新性を伴うインセンティブに結びつけることが可能となります。サステナビリティを事業戦略と密接に関連付けることは、社外のステークホルダーのみならず、さらに企業にとって重要な資産である従業員に対して、前向きなメッセージを送っている、ともいえそうです。
The Pros & Cons of Linking Sustainability Successes with Bonuses
January 11, 2012
GreenBiz.com
[関 智恵]